タンノイ・オートグラフを導入しました(その4.)

(オートグラフに入っていたHPD385Aです。ゴムエッジに張り替えてありました)
タンノイは火災の後、経営が悪化し、一時米国資本になっていました。
当時は既に書いたようにクルトミューラー製コーン紙でしたが、その後タンノイは再び英国独資となり、かつてのモニターゴールドに近いコーン紙を復活させました。
しかし具合の悪い事に、コンゴの内戦をきっかけに世界的なコバルト不足となり、こんどはマグネットがアルニコからフェライトに変更されてしまいました。
私はこの当時のユニット、フェライトマグネットでモニターゴールド風コーン紙のK3808を中古で買いましたが、正直あまり良い音とは思いませんでした。
このユニットは大阪暁明館病院の礼拝堂のPAスピーカーとして寄贈し、礼拝堂と隣の書庫に間の壁に取り付けて、壁バッフルで使用、現在は牧師様のお説教を拡声しています。
なお当時、マグネットはどちらもフェライトですが、ゴールドのコーン紙に近いK3808とHPDのコーン紙に近いK3838が併売されており、それらを大型バスレフ箱に入れたスピーカーをそれぞれスーパーレッドモニター、クラシックモニターとして売り出していました。
ネーミングから類推すると、タンノイはHPDのコーン紙の方がクラシック再生には好適と考えていたのかもしれません。
その少し後、タンノイは日本国内でPA用スピーカーも売ろうとしていました。
私はフェライト磁石の38㎝デュアルコンセントリック1本を仕込んだジャガーというスピーカーを、やはり中古で1ペア買い込み、二個を重ねて書斎のセンタースピーカーに使おうと目論みました。こちらもゴールド風コーン紙でした。
しかしジャガーは音に色気が無くて気に入らず、現在はパワフラッシュアリーナ(伯鳳会医療看護専門学校・明石校の講堂)でパワーリフティングの試合時のPAに使用しています。
TEAC製オートグラフの生産が終了して後、1982年にタンノイ社からウェストミンスターというコーナー型ではないコンパウンドホーン型スピーカーが発表されました。
このスピーカーはコーン紙はクルトミューラー製でしたが、マグネットがアルニコに戻っていました。ユニットの型番は3839Wだったと思います。
このスピーカーは言うまでもなくオートグラフのオマージュとして生産されたものでしょう。
バスケットの形はクラシックモニターに使われたK3838ユニットと同様に見えます。ですからウェストミンスターのユニットは、K3838をアルニコマグネットに変更した物のように思われます。。
そうなると3839Wは、クルトミューラー製コーン紙、ウレタンエッジ、アルニコマグネットですから、バスケットの形状を除くとHPD385Aに近いユニットではなかったかと想像します。
その後ウェストミンスターは何度かモデルチェンジが繰り返されました。
現在のウエストミンスター・ロイヤル・GRはアルニコマグネットで、コーン紙もモニターゴールドに近く、エッジもフィックスドに戻されたオールドファッションなユニットが使われている様です。
ウェストミンスターは気が付くと発売後40年が経っていますね。英国製オートグラフが発売されていたのは1953年から1974年の21年間でしたから、既に二倍の期間作り続けられています。
憶測ですが、ウェストミンスターは殆ど日本専用モデルではないかと思います。外国のYou Tubeでウェストミンスターを見かけることがあまりありませんので。
うーむ、五味康祐先生、恐るべしですな。
さてコーン紙が以前のものに近い仕様に変更されたので、オートグラフもイケるのではと、オートグラフ・ミレニアムという復刻スピーカーが2001年に期間限定で販売されたことがあります。
タンノイ社もアルニコマグネットでないとあの音は出ないと既に気づいていた様で、ミレニアムにはアルニコマグネットが採用されていました。
ですからこの時のユニットはモニターゴールドに近いものだったのではないでしょうか。
このスピーカーがタンノイ本社の製造なのか、TEACの企画物かはよく分かりません。箱も日本製か英国製かも不明ですが、評判は悪くなかったと思います。
実は私がじっくり聞いた事があるオートグラフは、1976年から数年間発売されていたTEAC製のオートグラフだけです。
30年ほど前、ある方の所でHPD385Aを進工舎箱に入れたものを聴かせて頂きました。アンプはテクニクス20AというOTLアンプでした。
これは大変良い音で感心しました。
しかしHPD385A入りのオートグラフはオーディオマニアの中では少々軽んじられています。TEAC製オートグラフを使っている方の多くは、オリジナル・オートグラフを狙われていると思います。
今回私が手に入れたオートグラフはこういった事情から、以下の経緯でやってきたものです。
A氏はTEAC製オートグラフを所有されていました。
B氏は終活のためにオーディオマエストロにモニターレッド入りのオリジナル・オートグラフ(!!)を持ち込みました。
A氏はそのオリジナル・オートグラフを購入し、下取り品として自分のTEAC製オートグラフをオーディオマエストロに引き取ってもらいました。
そのTEAC製オートグラフはそのまま数年間(10年くらいかも)お店に置かれたままでした。
今回そのオートグラフを私が入手した、という訳です。
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