タンノイ・オートグラフを導入しました(その2.)

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 (右chのオートグラフです。エアコンから水が垂れない様に気をつけないと)

 昔話、46年も前の私のオーディオ黎明期の話を少し書かせて頂きます。

 大学受験に失敗し、浪人が決まったとき、これから1年はTVをみないで勉強しようと、感心なベンプレ少年は、下宿の14インチTVを押し入れにしまい込みました。
 ここまでは良かった。

 しかし私はクラシック音楽を10歳から聴いていましたので、音くらい無いと寂しいなーと秋葉原にラジカセを買いに行きました(勉強しろよー)。
 
 ステレオ・ラジカセを何機種かヘッドホンで聞き比べた所、アイワのTPR-808が一番クラシック向きの滑らかな音でコレを購入、自宅に持ち帰りました。
 ところがヘッドフォンで聴いたらとても良いのに、ラジカセのスピーカーで聴いたらショボイ。

 これはラジカセのスピーカーが悪いのだろうと考え、既に廃刊となったfmファンという隔週刊誌に出ていた小型スピーカーの制作例を参考にして、これも今はないコーラル社のフラット5という12㎝フルレンジスピーカーを購入、今は輸入が禁止されたラワンの単板を、これまた今はない秋葉原デパートで買い込み、手引き鋸と回し引きで板取りをしてバスレフ箱を作って聴いてみました。
 これが効果抜群、音質が大きく改善されオーディオに目覚めました(勉強しろよー)。

 それからステレオサウンドや先のfmファン、その別冊などを買い始め、単行本として最初に読んだオーディオ本がゴマブックスから出ていた「五味オーディオ教室」でした。
 これは新潮社の「西方の音」の焼き直しだと後で知りましたが、それこそ何回も何十回も読み返しました(勉強しろよー)。

 その中でタンノイ社のオートグラフが絶賛されており、聴いてみたいものだと思っていました。
 バックロードホーンとフロントロードホーンのコンパウンドホーンだという事なので、ボール紙を切って、こんな感じかなーとコンスタントワイズのバックロードホーンエンクロージャーの前にフロントショートホーンを組み込んだ物を、想像だけで作ったりもしましたよ(勉強しろよー)。
 つまり私はオーディオ開始僅か2か月後に、見たことも聴いたこともないオートグラフの信者になっていたのです。

 後日、オートグラフの写真を見てコーナー型の複雑な折り返しホーンである事、実に典雅なデザインである事を知り、更に憧れが募りました。特に別冊fmファンのオートグラフの自作記事には驚かされました。

 そのころは既に英国本社ではオートグラフの生産は終了しており、タンノイの輸入元であるTEAC社がライセンス生産をしていました。
 箱は国産の、今は無き進工舎製、ユニットは最新型のHPD385Aに代わっていました。この箱はタンノイ社の認証を受けており、本社からは大変良く出来た箱だと感心されたそうです。

 オートグラフは複雑なコンパウンドホーンなのですが、部材が全て平板で構成されており、WE15aやJBLパラゴン、アルテックA7の様な曲線の部材がありません。
 そのため自作に挑戦され、成功される方が当時は沢山おられたようで、雑誌に良く取り上げられていました。

 この流れで、現在もスピーカー工房、木工所などでオートグラフの箱の受注生産をしている所がありますね。
 生産開始から70年も経っているのに、国内の複数の工房でレプリカが作られ続けているスピーカーはオートグラフだけでしょう。

 五味先生の著作の影響が大である事は間違いありませんが、やはり実物を見て、音を聴いて、どうしても手に入れたい、このスピーカーで音楽を聴きたいという人が現在も絶えないという事では。
 やはり時代を超えた名器だと思います。

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